三脚購入編
夜景撮影の必需品、三脚
三脚と言えば「荷物になる」「重い」「面倒くさい」などなど敬遠されがちなものです。しかし、美しい夜景を撮るためには必須アイテムと言えます。ここでは夜景撮影のパートナー、三脚の選び方を記してみたいと思います。
三脚のメリット
三脚を使用するメリットはカメラを固定できると言う事です。それによって生じるメリットとして以下の5つが挙げられます。
- カメラブレを防げる
- 感度を下げて撮影できる
- 絞って撮影できる
- 構図を固められる
- 記念撮影ができる
1.カメラブレを防げる
夜景を撮るには数秒~数十秒、場合によっては数分間シャッターを開け続け、光をカメラ内に取り込む事が必要になります。その間カメラを固定させておかなければ像がぶれてしまいます。三脚を使う事によってカメラを固定し、ぶれを防ぐ事ができます。
2.感度を下げて撮影できる
デジタルカメラは自由に感度を調節する事ができます(一部コンパクトデジタルカメラでは不可)。感度を上げればシャッター速度を短くできるのですが、画質は低下します。三脚を使ってカメラを固定する事でシャッター速度を気にせず感度を下げる事ができます。
3.絞って撮影できる
風景や夜景を撮る場合は絞り開放で撮るより、少し絞って撮った方が綺麗に撮る事ができます。また、パンフォーカス(被写体全体にピントが合っている状態)にする為にも絞り込む必要があります。ただ、絞るとシャッター速度が長くなってしまい、ぶれの原因になります。三脚を使ってカメラを固定する事でシャッター速度を気にせず絞る事ができます。
4.構図を固められる
夜景に限りませんが、同じカットを露出(明るさ)を変えながら何枚も撮る事があります。そう言った時に三脚を使えば構図が変わることなく撮れるので便利です。また、パノラマ写真を撮る時にも重宝します。
5.記念撮影ができる
シャッター速度が長くなる夜景撮影では、カメラを自分の方に向けて自分でシャッターを切るいわゆる「自撮り」はできません。そこで三脚とセルフタイマーを組み合わせる事によって夜景を背景に記念撮影ができます。
三脚の種類
三脚は、大きさごとにだいたい以下の4種類に分類する事ができます。もちろん厳密に区別されている訳ではありませんが、おおよその参考として記しておきます。
1.卓上三脚
文字通り卓上サイズの小さな三脚です。たためば30cm以下になるので普段お使いのバッグ等にスッポリ収まり、携帯性に優れ、価格も実売3000円以下で入手できます。ただ、三脚としての機能は低いので屋外での使用は考えない方がよいかもしれません。展望室内や屋外の大き目の手すりの上に置いて角度をつける、と言った使用法が有効です。脚を伸ばさず、安定した場所に置くのであればコンパクトカメラはもちろん、小型(入門機~中級機クラス)のデジタル一眼&広角レンズ(各社キットレンズくらいのもの&単焦点)の組み合わせでも使用する事ができます。安価なため、落としたりすると簡単に壊れたりするので消耗品と割り切る事も必要です。
2.小型三脚
実売1万円~2万円ほどで買える小型の三脚です。たたんだ場合は50cm以下になるため、大きめのバッグやリュックに収める事ができます。また、ある程度の剛性があるため、コンパクトデジタルカメラでの夜景撮影では威力を発揮します。しかし、デジタル一眼カメラで撮影する際には若干不安である上、強風時には転倒の恐れがあるため注意が必要です。
3.中型三脚
実売2万円~7万円ほどの三脚です。たたんでも60cm程になるため、大型バッグ以外に入れることは不可能です。デジタル一眼カメラを使って撮影するにはこのクラスの三脚が欲しいところです。このクラスは各メーカーともにラインナップが豊富で、安価で良質な商品も多いのでお奨めです。
4.大型三脚
実売7万~の大型の三脚です。剛性や性能は優れていますが、通常の夜景撮影にはここまでのサイズは必要ないでしょう。ただ、デジタル一眼の上級機をお使いの場合や、強風時の撮影ではこのクラスの三脚が必要になります。中型三脚でも風に煽られたり転倒したりする危険があります。
雲台
雲台というのは三脚の頂上に付いている台の事です。多くの三脚は雲台が付属されていますが、上級者向けの三脚には雲台が別売りのものがあります。雲台には自由雲台、2WAY雲台、3WAY雲台の3種類があり、文字通り自由雲台は全方向、2WAYは縦と横、3WAYは縦、横、水平に動かす事ができます。これだけ見ると自由雲台が一番便利そうですが、自由雲台は微妙な調整が難しいため、夜景撮影用途ならば3WAY雲台がお勧めです。なお、ビデオ用の雲台(三脚)も存在しますが、夜景撮影には不向きなので選択肢から外してしまって問題ありません。動画を撮るのであればビデオ用雲台も一台欲しいところですが、あくまで写真用とは別個に用意する必要があります。
選ぶ基準は?
三脚を選ぶ基準として以下の点をチェックしておきましょう。
- 予算
- カメラ(&レンズ)との重量バランス
- 脚を伸ばした時の高さ
- 脚をの直径、段数、ロック方式
- 材質、その他
予算
三脚の値段は様々で、1000円未満のものから10万円以上のものまであります。夜景、特に屋外での夜景撮影に関してはある程度の予算を用意してしっかりした三脚を購入したいところです。また、三脚は一度購入すれば長い期間使う事ができるので、コンパクトデジタルカメラをお使いなら1万円前後、デジタル一眼をお使いなら3~5万円程は用意したいところです。
カメラ(&レンズ)との重量バランス
三脚の最大の役割はカメラをしっかり固定する事です。よって、カメラの重さに対して三脚が華奢な場合はカメラブレ、最悪転倒などの危険がありますのでカタログなどの最大積載重量をチェックしておきましょう。デジタル一眼をお持ちで望遠レンズや大口径レンズを使う場合は特にしっかりした三脚を用意したいところです。理想としてはお持ちの撮影セットの2倍の最大積載重量の三脚を選びましょう。
脚を伸ばした時の高さ
屋外の夜景スポットには手すりや柵が設置されている場所が多くあります。よって、脚を伸ばした時に柵より高くなるものが望ましいです。デジタル一眼カメラをお使いの場合はファインダーが目の高さくらいになるような三脚であればファインダーをのぞく際の負担も少なく、使いやすいでしょう。例えば、身長が160cmとすれば目の高さは約150cm、雲台とカメラのファインダーまでの高さは合わせて約20cmなので三脚の理想の高さは130cmになります。
脚の直径
三脚の脚の太さです。当然太いほうが安定性があり夜景撮影には適していますが、価格は高くなります。デジタル一眼をお使いであれば最低でも22mm以上はあったほうが良いです。
段数
普段、三脚の脚は太さの違うパイプを重ね合わせて縮めてあり、それを適宜伸ばして使用します。そのパイプの本数を段数と呼び、主流は3段と4段になります。伸ばしたときの脚の長さ、材質が同じとすれば、3段型は4段型に比べて安定性で勝り携帯性で劣ります。
ロック方式
三脚の脚は長さを自由に調整できるようにロック機構が備わっています。ロック機構はレバーをパチンと締めて固定するレバー式とナットをギュっと回して固定するナット式があります。取り回しはレバー式の方が楽ですが、使用しているうちに部品の磨耗によって締める力が弱まっていきます。とは言え、そんな簡単に劣化するものでもないためあまり気にする必要はないでしょう。
材質、その他
三脚にはアルミ三脚とカーボン三脚があります。カーボン製はアルミ製に比べれば軽量なかわりに剛性に劣ると言われていましたが、最近はそういった欠点も克服されつつあり、軽くて機動性に優れるカーボン製をお奨めします。あと、三脚のスペックとは直接関係ないのですが、脚にウレタングリップが巻かれているタイプを購入することを強くお奨めします。その理由は、夜景が最も美しく見えるのは冬場の空気が澄んだ時期で、こういった時期の撮影が多く想定されるためです。滅多にありませんが、厳寒期に素手で三脚を操作すると冷たくなった脚部に手の皮が張り付いてしまう事があるからです。グリップは市販品を後で取り付けることも可能ですが、それならば最初からグリップが装着されているものを選んだほうが良いでしょう。
おまけ前項でカーボン三脚はアルミ三脚に比べて軽い・(価格が)高い・堅牢性でやや劣ると書きました。であれば夜景撮影用としてはアルミ三脚の方が適しているように思えますね。それでもカーボン三脚をお奨めしたのは「カーボンはアルミよりも熱伝導性が低い(=冷たくなりにくい)」のも大きな理由です。また、カーボンは振動を吸収する力に勝るため堅牢性の弱さも決定的な弱点とはなりません。以上の理由から高価であってもカーボン三脚をお奨めしました。
補強ステーはダメ
開脚時の安定性を高めるため、脚の部分に補強ステーが装着されている三脚があります。雲台上でカメラを動かすことを前提に作られているビデオ用三脚などでは効果的なのですが、夜景撮影用としてはチョット困りものです。補強ステーが着いている三脚は安定性がある代わりに、脚を自由に動かせないといった弱点があります。もちろん通常使用には問題ないのですが、展望室内での撮影などでは前脚だけを窓枠に乗せ、後ろ脚は床に設置させるといったイレギュラー的な方法で撮らなければいけない場合もあり、そんな時補強ステーが邪魔で三脚を使えないのです。
オススメは?
基本的に三脚は、予算と持ち運びに支障をきたさないレベルで最も大きく、重いものを選ぶのが最良とされています。とは言うものの、極力持ち運びの負担にならずに夜景撮影には必要条件を備えている三脚を選びたいものです。そんな中私がオススメするのは「中型三脚 + 卓上三脚の2本セット」です。コンパクトデジタルカメラをお使いの場合には中型三脚はややオーバースペックなのですが、将来的にデジタル一眼カメラを購入したり、夜景撮影にハマってくると決してオーバースペックではありません。卓上三脚はバッグの中に入るコンパクトさながら、屋内の撮影では絶大な威力を発揮します。屋外での使用には難がありますが、それでも設置場所を工夫すれば何もないよりはるかに完成度の高い写真を撮る事が出来ます。具体的なスペックは下記のようになります。
- アルミ製よりカーボン製
- 最大積載重量はカメラ(+レンズ)の2倍
- 伸ばしたときの高さは身長 - 30cm
- 脚の太さは最低22mmできれば25mm以上
- 補強ステー付きはダメ
- 段数、ロック方式はお好みで
- 脚にウレタングリップが巻いてある
大型三脚という選択肢
前項で書いたように、中型三脚と卓上三脚の組み合わせてほとんどの状況下での夜景撮影が可能です。それでも中型三脚では難しい状況も一部ですが存在します。
- 花火大会
- 強風時の撮影
- 工場夜景
- 障害物に遮られている場合
花火大会
花火撮影そのものは大型三脚は必要なく、小型~中型三脚で充分です。しかし、会場入りの時間によっては撮影に適したポジションに陣取ることができない時もあります。そんな場合、あえて最後方にカメラを構えてギャラリー込みで撮るといった撮影方法も想定されます。この場合、目の前を通行人が通ったりする事があるためカメラをできるだけ高い位置におきたいところです。
強風時の撮影
撮影場所や環境によっては中型三脚でさえ風に煽られることがあります。以前河口湖に夜景を撮りに行った際、強風によって三脚が倒れ、土手の下に落下し見事にレンズマウントが破損してしまいました。カメラの設置場所や置き方の工夫によってここまでの事故は防げますが、より強風に強い三脚を使うに越したことはないでしょう。
工場夜景
近年、工場夜景がチョットしたブームになっていますが、当然工場は企業の敷地内なので関係者以外の進入を禁止しています。よって設けられている柵も人の身長以上のものが多く、通常に三脚を構えても柵に視界を遮られてしまいます。そんな時、大型三脚を使いエレベーター(センターポール)をあげれば柵の上からカメラを向けることができます。
格安三脚ってどう?
家電量販店などで3000円くらいの安価な三脚を見かける事があります。サイズ的には小型三脚クラスなのですが作りはわりとしっかりしていて、私の見た感じでは必要最低限の機能は備わっていると思います。さすがに中型三脚クラスの安定性は望むべくもありませんが、風のある日は脚をあまり伸ばさない等の工夫をすればコンパクト~一眼入門機での使用はある程度可能でしょう。ただ、これ一本で全ての夜景撮影をこなすのは難しいので、中型・大型三脚のサブとして使うか無風な屋内での使用をメインにするか、使い方を割り切ったほうが良いでしょう。