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夜景撮影の基礎

はじめに

この章では主に夜景撮影を始めるにあたっての基礎を解説したいと思います。夜景を綺麗に撮るには構図やピントといった基本はもちろんですが、光をいかに捉えるかが肝心です。

明るさについて

以降の内容はシャッター速度、絞り、ISO感度を自由に設定できるカメラ用の説明になります。フルオート機をご使用の場合はこの項目は読み飛ばしてしまって結構です。

夜景撮影の最大のポイントは光(明るさ)です。基礎編で「写真の明るさを決めるのはシャッター速度、絞り、ISO感度であり、絞り(と一部被写体においてはシャッター速度)に関しては明るさを調整する意図では使わない。」と書きました。この3者を変えることで作画がどう変わるのか、少し詳しく説明してみたいと思います。撮影において非常に大切なところなのでしっかりマスターしましょう。

単純に明るさだけの話をするなら、シャッター速度を短くした(暗くした)場合は絞りを開ける、ISO感度を上げるのどちらか、もしくはその両方で同じ明るさを維持することができます。しかし、絞りとシャッター速度(被写体による)は作画そのものに影響があるので、どうやって明るさを調整するか考えて撮る必要があります。

シャッター速度による作画の変化

シャッター速度が長くなれば当然被写体ぶれが発生します(カメラが固定されていなけばカメラブレも)。自動車のライトの光跡は被写体ぶれによるもので、あえてぶらす事によって作品性を高めることができます。

絞りによる作画の変化

絞りによって変化するのは被写界深度です。ピントの合っていない場所のボケ具合が違うのがわかります。絞りをコントロールすれば背景をぼかして被写体を浮かび上がらせたり、全体をくっきり撮ったりすることができます。

ISO感度による作画の変化

作画そのものは変化しません。しかし、ISO感度を上げるとノイズというザラザラが発生して画質が低下してしまいます。

キーワード
手ブレ(カメラブレ)
露光中にカメラがぶれることによって像全体がぼやけること。
被写体ぶれ
露光中に被写体が移動することによって被写体がぼやけること。

シャッター速度、絞り、ISO感度を変えたことによる作画の変化はお分かりいただけたと思います。では実際に撮影するに当たってはこの3者のどれで明るさを調整すればよいのでしょうか。

三脚使用時

三脚を使っている、もしくはしっかりとした場所にカメラを固定できている場合は、シャッター速度によるカメラブレを心配する必要はないので基本シャッター速度で明るさを調整します。夜景撮影時にブレる可能性のある被写体は通行人と自動車で、どちらもぶれてしまって問題ないものです。むしろ通行人や自動車の車体は写らない方が都合が良いでしょう。シャッター速度はデジタル一眼であれば数時間単位で設定できるので夜景撮影はシャッター速度だけで明るさを確保できます。

手持ち撮影時

三脚を使っていない場合はシャッター速度をあまり長くすることはできません。よって手ブレをしないギリギリのシャッター速度を設定して、それでも明るさが足りなければISO感度を上げて対応します。ISO感度をあげるとノイズが発生しますがある程度我慢するしかありません。それでも明るさが足りない、ノイズが酷いという場合にはじめて絞りを開けて明るさを確保します。

手ブレを防ぐシャッター速度

Webや書籍などで、手ブレを防止するには1/焦点距離よりシャッター速度を短くするとあります。この1/焦点距離という数値はあくまでフィルムカメラ、もしくは35mmセンサー搭載機での話です。同じレンズを装着した場合と仮定すればセンサーサイズが小さい方が手ブレしやすいというのだけ覚えておきましょう。

手ブレ防止シャッター速度一覧
センサーサイズ シャッター速度
35mm 1/焦点距離
APS-C機 1/焦点距離×1.5
マイクロフォーサーズ機 1/焦点距離×2
コンパクトデジカメ 1/焦点距離(35mm換算 ※)

補足コンパクト機の仕様を見ると「焦点距離5.0~25mm(35mmカメラ換算28~140mm)」などと表記されています。手ブレ防止速度を見る場合は35mmカメラ換算の方で判断して下さい。ちなみにこの場合、焦点距離そのものは5.0~25mmになり、28~140mmではありません。

デジタルは手ブレしやすい?

よく、デジタルになって手ブレしやすくなったと言う意見を聞くことがありますが、実際はフィルムカメラとテジタルカメラでブレやすさが違うと言うことはありません。デジタルがブレ易いといわれる理由は主に3つ。1つ目ははフィルム時代はL判(89mm×127mm)やはがきサイズでの閲覧が大半だったのに対し、デジタルは大きなモニターで観賞されるため。2つ目はデジタルはフィルム以上に高精細なのでブレが強調されため。3つ目はデジタルはフィルムよりセンサーのサイズが小さいものが多く、画角が望遠よりになるためです(望遠の方が広角よりブレ易い)。

被写界深度?

被写界深度というのは簡単に言えば「ピントの合っている範囲」です。手前から奥まで広い範囲にわたってピントが合っている状態を被写界深度が深い、逆にピントが合っている範囲が狭い状態を被写界深度が浅いといいます。

被写界深度関係表
被写界深度 F値(絞り) 被写体との距離 焦点距離
浅い 小さい 近い 長い
深い 大きい 遠い 短い

という事は、ボケを大きくする為には望遠レンズを使って被写体に近づき、F値を開放(最小値)で撮るのが最良という事になります。ただ、レンズには撮影可能距離(もっとも接近できる距離)が設定されており、それ以上に接近するとピントを合わせる事ができなくなるので注意してください。

夜景撮影のポイント

まず初めに、夜景を撮るために必要なポイントは以下の3点です。

  • カメラをしっかり固定する
  • フラッシュは発光禁止
  • ピントはしっかりと

カメラをしっかり固定する

夜景を撮るには長時間シャッターを開け、多くの光を取り込むようにします。そのため、シャッターが開いている間にカメラがブレないようにしっかり固定する必要があります。手持ちで撮る場合も手すりの上や壁などにカメラを押し付けたりして出来るだけ固定しましょう。

セルフタイマー、リモコンを有効活用しよう

手ブレと言うのは厄介なもので、シャッターを押す瞬間やシャッターから手を離す瞬間にも生じるものです。そこで、記念写真等で使うセルフタイマーやリモコンがある場合はリモコンでシャッター操作をし、直接カメラに手を触れないようにしましょう。なお、セルフタイマーの設定方法はカメラのマニュアル等をご覧下さい。

フラッシュは発光禁止

夜景撮影は暗い場所での撮影になるのでフラッシュを焚く必要があるとお考えの方も多いようですが、通常の夜景撮影ではフラッシュは必要ありません。夜景は遠くの景色を撮るものなのでフラッシュの光は届きません。また、フラッシュを焚くことによってカメラが「明るさは充分」と判断してしまい、シャッター速度を短く設定してしまうためです。なお、夜景と人(や物)を同時に写す場合にはフラッシュを使用します。詳細は後述します。

ピントはしっかりと

ピントリング
ピントリング

せっかく撮った夜景もピントが合っていなくてボケボケでは意味がありません。しかしながら夜景とは暗いもの、カメラのAF(オートフォーカス)が苦手とする被写体です。もしカメラ任せでピントが合わない時は無限遠を使いましょう。AFからMF(マニュアルフォーカス)に切り替えて無限遠を使います。コンパクト機の場合は液晶に∞マークが表示されていればOKです。デジタル一眼ならばレンズの∞マークに指標を合わせれば無限遠になります。お使いのカメラに無限遠がない場合はAFで遠くの街灯などの明かりにピントを合わせると良いでしょう。なお、機種によっては夜景モードにすれば自動的に無限遠に設定されたり、遠景モードなどの名称で無限遠に設定するモードがあったりもしますので、お持ちのカメラのマニュアルをご確認下さい。

ホワイトバランスは?

多くのデジタルカメラではホワイトバランスを設定できるようになっています。ホワイトバランスとは白いものを白く写すためにカメラが色を補正する機能の事です。詳細は別項で書きますが、ここでは「写真の色合い」程度の感覚でよいかと思います。液晶モニターを見ながら、自分好みの色合いを設定して下さい。わからない場合は「オート」で撮ってみてください。後述するRAW形式で撮影する場合はホワイトバランスは特に考えなくても結構です(オートでよい)。

記録画質は?

撮った写真は最高画質(ファインモード)で記録するようにした方が良いです。写真は思い出になるものなので出来るだけ綺麗な形で残したいものです。その分ファイルサイズは大きくなりますが、メモリーカードも低価格化&大容量化しているので充分対応できるでしょう。

RAW?

通常、デジタルカメラで撮った写真はJPEGというファイル形式で保存されますが、デジタル一眼カメラやハイエンドコンパクト機ではRAW(ロウ)というファイル形式で保存できるものもあります。これは撮像素子がレンズから受けた情報を画像エンジンによって加工される前の状態でそのまま保存するものです。例えるなら調理前の食材と言って良いでしょう。RAWはパソコン等で自分の好きなように現像処理(調理)できるのが最大の利点ですが、そのままではプリントしたりモニターで鑑賞したりはできず、現像処理も少々コツが必要なので最初のうちはJPEGで撮る方が良いでしょう。現在のデジタルカメラの画像エンジンは優秀で、充分な品質を確保できるでしょう。

液晶だけで判断しない

デジカメでは撮った写真をその場で確認する事ができます。これはデジカメの最大のメリットなのですが、液晶では綺麗に見えても実際にパソコンでみたり、プリントしたりするとそうでない場合もあります。特に明るさは夜景撮影の生命線です。液晶では暗め、もしくは明るめでもプリントしてみるとちょうどいい場合もあるかもしれません。そういった液晶&機種ごとの「クセ」も使いこんで把握していきましょう。